今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」97話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 96話 あらすじ
前話ネタバレはこちら
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先日出掛けた先で声をかけてきた沼尻という男性が、再びチヌの前に現れました。
公三郎の父親である公次郎と旧交を温めたいと言って若水邸までやって来た彼の本当の目的は、チヌからお金を強請り取ることでした。
なんと沼尻は、捏造した証拠まで用意した上で、チヌが不貞を働いているという噂を流されたくなければ、火事に遭った自身の工場を建て直すためのお金を用意しろと脅してきたのです。
噂の恐ろしさを身にしみて知っているチヌは、相談相手を求めて東陽楼へと向かいますが・・・。
声なきものの唄 97話 ネタバレ
公三郎の父・公次郎と知り合いだと名乗る沼尻という人物が若水邸へやって来たと聞いたチヌは、
(なして!?あの“ヌマジリ”が、義父上様の友人やて!?)
とたちまち顔を青ざめさせました。
しかも、公次郎はまだ九州から戻ってきておらず、公三郎も不在のため、晴子が来客の対応をすることになり、それに付き添う形でチヌも彼と対面することになってしまいます。
マッチ工場を経営しているという沼尻は、公次郎とは「遊びにいった先でよう会うて、意気投合した」仲だと語り、晴子のことは「さすが若水さんが自慢しとっただけんこたありますなあ、おきれいな奥方で!」と持ち上げて、愛想良く振る舞いました。
その様子を見ていたチヌは、
(“知っとる妓”に声かけただけ・・・なのかも)
と少しだけ肩の力を抜きます。
しかし案の定と言うべきか、沼尻は帰り際忘れ物をしたと嘘をついてチヌと2人きりという状況を作り上げると、とたんに彼女に迫り、無理矢理口づけをしようとしてきたのです。
そうして沼尻は、慌てて彼から離れたチヌに向かって「こいであんたは“不貞”を働いたんや」と告げ、嗤いながら「亭主にもいえんやろ。わしにゃああんたから誘われた“恋文”もあるけんな」と続けました。
当然ながらチヌは沼尻宛てに恋文を送ったことなどありません。
しかし、(どうせイカサマやろう)と思っても、沼尻の言った通り恥ずかしくて公三郎には打ち明けられず、公次郎の知り合いだという彼を無視するわけにもいかないため、仕方なく「明日の2時海神神社へこいや」という相手の言葉に従うことにします。
翌日、チヌは「信心しとる神社へ 願かけにゆく日なんです」と嘘をついて家を出ました。
お付きの使用人・おたよも遠ざけ、境内で1人沼尻を待っていると、ほどなくして彼が現れます。そして、「若水家の若奥様が、体がさみしゅうて以前の客を誘って男あさりしとる証拠の文」を買いとってくれと言いながら、チヌの筆跡を真似て書いた手紙を見せてきました。
「もちろん、こん手紙買うてもらえんかったら盛大にふれ回るでエ。
若水家はさぞ恥かくやろな」と脅されたチヌは、悔しさでワナワナと身を震わせつつも、「そん手紙、買いましょう」と自分が自由にできるお金をすべて沼尻に渡しました。
ところが彼はそれをはした金呼ばわりし、昨年火事に遭ってしまったという自身のマッチ工場を建て直せるだけの金額を要求してきたのです。
女郎であった時に、おもしろおかしく話を盛られたり、根も葉もない噂を流されて苦しんだ経験を持つチヌは、その怖さを良く理解していました。
(うちんせいでまた若水の家がそしられる)
と思い詰めたチヌは、知恵を授けてもらおうと明子のもとを訪ねます。
しかし、残念ながら明子は留守で、次に向かった東陽楼では「足ィ洗うたんですけん、廓なんぞにそういらっしゃるもんではねえ」と線を引かれてしまい、やるせない気持ちを抱えたまま帰路につくことになったのでした。
声なきものの唄 97話 感想・考察
97話では、沼尻がチヌに近付いてきた目的が判明しました。手紙を偽造して脅迫・・・という卑劣な手段を用いてきたことにチヌはがく然としていましたが、矢津遊郭の中では名の知れた女郎であった彼女を正妻として迎えることによって起こり得るであろう様々な事態をきちんと予想し、その対策までしっかりとしていた公三郎ならば、沼尻のような人間が現れる可能性も想定していたのではないでしょうか?
チヌが公三郎に相談するのをためらう気持ちは理解出来ますが、内緒にしたままではより深刻な問題に発展してしまいそうで心配です。
安武わたる先生、いつも素敵なお話をありがとうございます。
次回ネタバレはこちら
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