今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」96話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 96話 あらすじ
前話ネタバレはこちら
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自身の母親に振り回されて疲弊してゆく妻の身を案じた公三郎は、波風を立てないよう言い回しを工夫して、見事チヌの負担を減らすことを晴子に認めさせました。
おかげで、嫁と姑の関係も少しずつ良い方向へと向かいはじめます。
ところがその矢先、かつての客であったらしいヌマジリと名乗る男性と街中で出くわし、「千鳥」と親しげに声をかけられてしまうという事件が起きました。
そのためチヌは当分外出を控えることに決めます。
しかしある日若水邸に、沼尻と名乗る人物がやって来たのでした。
声なきものの唄 96話 ネタバレ
公三郎が晴子に向かって
「チヌがお世話するのを少し加減してもらえませんか?」
と言うのを目の前で聞いたチヌは、
(やめてくだせえ若様っ。かばってくださればくださるほど、義母上様のキゲンが・・・)
と内心ひどく焦りました。
彼女が危惧した通り、気に入らない嫁の肩を持つような愛息子の言葉に対して、晴子はギッと眦を決し、額に青筋を立てます。
しかし公三郎は、すかさず
「もちろん聡明なお母さんのこと、あなたのお世話をさせながら、嫁をしつけておられるのでしょうが・・・少しばかりの温情は効果的ですよ」
と続け、さらには
「ああ いや・・・失礼。旗本の血を引く誇り高いお母さんには、目下の者への慈悲深さなどごくあたり前のことでしたね」
と付け加えることで、晴子がこの申し出を断りにくい状況をつくりだしたのです。
その上で公三郎はニッコリと微笑みながら
「僕も、新婚早々妻と共寝できないのは、さみしいですからねえ」
などと言ってのけ、不本意ながらも晴子は「チヌがお世話するのは夕食まで」という提案を受け入れざるを得なくなりました。
おかげで夜はゆっくり休むことが出来るようになったチヌは、心にも余裕が生まれ、その結果晴子の世話を手際良くこなせるようになっただけでなく、意地悪をされても笑って受け流せるようになります。
頑なだった晴子の態度もわずかながら軟化しますが、その矢先、またしてもチヌの心に影を落とす事件が起きてしまいました。
それは、晴子の薬を受け取りに行くという名目で久しぶりに外出した先での出来事でした。中山帽をかぶった男性が突然チヌの肩を叩き、人目をはばかることなく
「千鳥やねえか。玉のコシにのったと評判やったが、こげんとこで会えるとは!」
と声をかけてきたのです。
しかもその男性は、言葉を返せずにいるチヌに向かって
「忘れたんかい、ヌマジリやヌマジリ!「ヌマ様〜」ゆうてふたりでしっぽり濡れたやねえか」
と無遠慮に続けたばかりか、なおも彼女が黙っていると、
「触りゃあ思い出すかいの」
などと言いながら不躾に触れてきたのでした。
この一件でチヌは、かつての客といつどこで会ってしまうかわからない・・・ということの怖さを痛感しました。そして、ヌマジリと名乗った男性と相対した際、恐怖に身をすくませるだけでなにも出来なかった自分を情けなく思い、
(情けねえうちを知られとうない。若様に、がっかりされとうない・・・!)
と公三郎にこの件を話さないことを決めてしまいます。
さらにチヌは、街へ行きさえしなければヌマジリを含む千鳥の客に会ってしまうことはないだろう・・・と考えて、しばらくは外出を控えることにしました。
それでも気持ちを切り替えることが出来ず、義母のお世話中もボンヤリと考え込んでいたせいで叱責を受けていると、そこへお清がやって来て
「大旦那様のお知り合いという方がお見えになっております」
と告げます。
そしてその客の名はなんと、「沼尻」というのでした。
声なきものの唄 96話 感想・考察
96話では、嫁姑問題に解決の兆しが見えてホッとしたのも束の間、新たな問題がチヌの身を襲います。
女郎時代の客と遭遇してしまったとしても、相手が意地の悪い人で、それを殊更吹聴したりしなければ、気まずい思いを味わうくらいで済むかもしれません。しかし、このヌマジリという男性はあまり良い人ではなさそうです。今話のラストでは沼尻と名乗る人物が若水家にやって来ましたが、果たしてその人はチヌが会ったヌマジリ氏と同一人物なのでしょうか?
もしそうだとして、ヌマジリ氏が良からぬことを考えているのであれば、大きなトラブルに発展してしまう前に、チヌが勇気を出して公三郎に相談することを願うばかりです。安武わたる先生、いつも素敵なお話をありがとうございます。
次回ネタバレはこちら
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