今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」98話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 98話 あらすじ
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沼尻に脅迫されたチヌは、助言を求めて実家である藤富家へと向かいました。しかし、間が悪かった上におトウさんの体調が優れないことを知らされた彼女は、そんな時に余計な負担をかけてはいけないと考えたのか、何も言わずに帰ってしまいます。
そうして結局誰にも沼尻について相談出来なかったチヌは、どうやら今回のトラブルを自分の力だけで解決しようと決めてしまったようです。一体どうするつもりなのか、どこか吹っ切れたような表情で明るく振る舞い、夫に贈る浴衣を急いで仕立てようとしているチヌを見て、公三郎はわずかに違和感を覚えますが・・・。
声なきものの唄 98話 ネタバレ
不安に駆られ思わず矢津遊廓まで来たものの、タイミングが悪く明子には会えず、東陽楼でも沼尻のことを相談出来なかったチヌが次に向かったのは、公三郎と結婚するまでしばらく養女として住んでいた藤富家です。
しかし、残念ながらおトウさんもおカアさんもちょうど揃って出掛けるところでした。2人が夫婦となる際にお世話になった恩人が亡くなり、その葬儀に参列するため下関まで行くようです。
また、美緒によればおトウさんの体調がどうも思わしくないらしく、養生のため温泉でゆっくり休んでから帰宅する予定だと聞いたチヌは、おそらく彼らに心配をかけまいと考えたのでしょう。
「なんぞ、お話 あったんやねえですか?」
と気遣ってきた美緒に対して
「なんもねえわ」
と微笑み、沼尻について何も話さぬまま帰路に着いたのでした。
こうして結局誰からも助言を受けることが出来なかったチヌですが、その後自分なりにこれからどう動くべきか考え、答えを出したようです。
それでも公三郎の前ではこれまで通り、何かあったことを彼に気取られぬよう明るく振る舞っていました。
機微に聡く、いつもならチヌのちょっとした変化すら見逃さない公三郎も、面倒な仕事を抱えて疲れていたせいでしょう。自身のための浴衣を夜なべしてまで急ぎ縫い上げようとしている姿や、一向にチヌになつこうとしなかった猫の若王が珍しく彼女の膝の上で丸くなっている様子にひっかかりを覚えながらも、その理由を強く追及しませんでした。
2〜3日の予定で出張に行くと伝えた際、
「えっ!?」
と大きな声をあげた後、
「やっぱりなぁ・・・」
などと奇妙な台詞を口走ったことに対しても、疑問に思いつつも何故そのように驚いたのかその場で本人に問うことはしなかったのです。
一方その頃、目論見通りチヌに揺さぶりをかけることに成功した沼尻は、彼女からせしめた5円をお代にあてたのか生活が苦しいにもかかわらずお酒を飲み、すっかり良い気分になっていました。
そんな沼尻へ険しい表情を向ける彼の妻は、狭い長屋の中でまだ幼い子を背負いながら内職に励んでおり、彼女の疲れた様子からも経済状況の厳しさがうかがえます。
かつては東陽楼で遊べるほど羽振りの良かった沼尻が現在のように落ちぶれてしまったのは、彼自身がチヌを相手に語った通り、1年半前に経営していたマッチ工場を火事で失ったことが原因です。
その火事が奇しくも沼尻が千鳥太夫と共にいた時に起きたこと、そしてそれからしばらくして彼女が若水家へ嫁いだことから、沼尻は何故か
(わしの運は喰われたんや、あん妓に)
と思い込んでいました。
つまり、沼尻がチヌに狙いを定めたのは、
(わしん不幸は、あのゲンの悪い女のせいやっ)
という、なんとも身勝手な理由からだったのです。
声なきものの唄 98話 感想・考察
98話では、沼尻が客としてチヌと出会ったところから彼女を脅迫しようと考えるに至るまでの流れが詳しく描かれました。
工場が火事で焼けてしまったことについては気の毒ですが、その結果落ちぶれたことをチヌのせいにした挙げ句彼女からお金を強請り取ろうとするなんて、ずいぶんと理不尽で自分勝手に思えます。
チヌがうっかり何かしてしまったというわけではない分、どれほどの大金を渡そうと満足せず、自身の気が晴れるまでしつこく追いかけ回してきそうで心配ですが、果たして解決方法はあるのでしょうか?
安武わたる先生、いつも素敵なお話をありがとうございます。
次回ネタバレはこちら
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