今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」95話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 95話 あらすじ
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義母・晴子との関係は改善されぬまま、チヌは、しばらくの間留守にすることになった公三郎の父親から、彼女の世話を任されます。晴子本人も、看護婦を手配しようとした公三郎を止め、チヌの介助を受けると言い出しました。
しかし、だからと言って気に入らない嫁に対する嫌がらせをやめる気など晴子にはありませんでした。
チヌは時に落ち込みながらも、懸命に義母に尽くします。そんな妻の様子を見かねた公三郎は、晴子に対しあることをお願いするのですが・・・。
声なきものの唄 95話 ネタバレ
公三郎の母・晴子に嫁として認めてもらうべく、どれほど意地悪されようと彼女の身の回りの世話をすることを決めたチヌでしたが、公三郎が仕事へ出かけ、公三郎の父親も旧友たちに誘われたからと珍しく外出したある日、事件が起こります。
それは、御不浄に行きたいという晴子の要望に応えて、彼女の乗った車イスをチヌが押していた時のことです。急に晴子が庭に向かってグイッと身を乗り出したため、車イスごと縁側から転落してしまったのです。
とっさに義母を庇ったチヌは、晴子の下敷きになる形で地面に叩きつけられたばかりか、上から降ってきた車イスが思い切り体に当たり、思わず「ぐえっ」と苦悶の声をもらしました。
その甲斐あって晴子は打ち身だけで済んだのですが、彼女から「あんたのせいや」と責められてしまったチヌは、
(あれ、落ちたのワザとでは・・・?まさか、うちんせいにしようと・・・?)
とモヤモヤした気持ちを抱えます。
しかも、帰宅するなり母親がケガをしたことを知らされた公三郎が、晴子に向かってすぐさま「チヌの不調法、お許しください」と頭を下げたのです。
夫からはチヌに対する態度を咎められてしまった分、自慢の息子が自身の味方についてくれたことがよほど嬉しかったのでしょう。パアッと顔を輝かせた晴子とは対照的に、チヌの顔色は良くありません。公三郎が迷わず謝罪したことに傷付いた・・・というのも理由の1つですが、チヌの顔を曇らせている原因は他にもありました。実は、公三郎の父親が外出先からそのまま九州へと旅立ってしまい、留守にしている間の晴子の世話を彼から直々に頼まれてしまったのです。
また、晴子を診てもらうために急いで呼んだ医師が、「ああ・・・あんたけ!元女郎の玉のコシやと評判やった!」と言いながらスリスリといやらしい手つきでチヌの体を触ったことも、彼女の心に影を落としていました。
(しかたねえ、アレがふつうや。うちにゃ一生、「元女郎」がついて回る・・・)
と自身に言い聞かせるチヌでしたが、
(ようでけた息子が、よりにもよって女郎・・・を身請けして正妻にすえるなんぞ、許せんことやろなあ・・・)
などと自分を卑下するような考えもふとした瞬間に浮かんでしまいます。
チヌにとって唯一の救いは、公三郎が晴子のケガについて彼女に責任がないことを理解しており、きちんと「すまなかったね・・・君のせいではないとわかっているから」と言ってくれたことです。
しかしその後晴子に対し、「お母さん、お願いがあります。チヌがお世話するのを、少し減らしてやってもらえませんか?今日は僕が代わりますし」と申し出たことに関しては、心の中で思わず
(やめてくだせえ若様・・・!)
と叫んだのでした。
声なきものの唄 95話 感想・考察
95話における公三郎の立ち回りは、表立っては母親の言い分を受け入れて妻の不手際を謝罪しつつ、チヌに対してはしっかりと事情は理解している旨を伝えるという、相変わらずそつがないものです。公三郎がチヌを庇えば晴子は益々意固地になると予想されますので、この時点では彼の行動は正解と言えるでしょう。
しかしその後、チヌの負担を減らしてやって欲しいと晴子に伝えたのは、どうやら悪手だったようです。
妻を気遣う夫として当然の言葉のように思えますが、どこに問題があったのでしょうか?次話で理由が明かされるのが楽しみです。安武わたる先生、いつも素敵なお話をありがとうございます。
次回ネタバレはこちら
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