今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」93話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 93話 あらすじ
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大多和に続いて若水邸へとやって来たのは、当主である公三郎が正妻にしたという元女郎の顔見たさに集まったやじ馬でした。チヌは彼らから身のほど知らずだと罵られてしまいますが、彼女が身を挺して公三郎を凶刃から守ったことを知ると、人々は急に態度を変えます。
実はこれは公三郎のおかげでした。公三郎はチヌには内緒で久米親分と会い、穏便にやじ馬を解散させて欲しいとひそかに依頼していたのです。
しかしホッとしたのもつかの間、それから何日か後、今度はなんと公三郎の両親が連絡もなしに現れたのでした。
声なきものの唄 93話 ネタバレ
公三郎の両親が近いうちに戻って来ることを大多和から教えられた直後、チヌは若水邸の門前に大勢の人が詰めかけていることに気が付いてギョッとします。
彼らは、大地主である若水家に元女郎が当主の正妻として迎えられたという話を聞いて押しかけたやじ馬でした。
大多和からは
「ええ話のタネを提供なさったもんですな」
と嘲笑され、
女郎上がりの新妻に興味津々な人々からは
「カオ見せとくれや、ご新造さんよーーッ」
「矢津の妓(おんな)だったってえのはホンマかいっ」
「天の岩戸みてえに隠れとおす気かよーーっ」
「もったいぶんなや神様でもあるめえにっ」
などと野次を飛ばされてしまったチヌは、思わず顔色を悪くします。
しかし彼女は気丈にも、たった1人でやじ馬たちの前へと進み出ました。
そうして、元女郎の身でありながら若水家へ嫁いだことを
「なんちゅうバチあたりなっ」
「あんまりに身のほど知らずやろ・・・!」
などと詰られても、
「おっしゃるとおり!・・・身のほど知らずにも、嫁入りしたです。そやけん一生かけて、旦那様にゃ身を尽くしてご恩返しを・・・と思うとりますっ。・・・はたからどないいわれよと、そいをやりとげにゃあ、うちを選んでくださった方に申しわけがたたねえ」
と、毅然とした態度で胸の内を語ったのでした。
すると、不意にやじ馬の1人が、チヌが公三郎を庇って大怪我をした事件のことを口にしました。その途端に人々は手のひらが返し、チヌに対する意見を「なんや立派な女(おなご)やねえの、キズを負ってまでなんざ・・・」と好意的なものへ変えます。
その光景を見た大多和は憮然としますが、実はこれは公三郎が仕組んだことでした。公三郎はひそかに久米親分へ助力を頼み、彼の子分がやじ馬のフリをして、チヌが公三郎にとっての恩人であることをアピールしたのです。
それからしばらくして、そんな騒ぎがあったことを知った明子が、チヌの身を案じて若水邸を訪ねてきました。
公三郎の両親がいつ現れるかわからない状況でずっと気を張っていたチヌは、信頼を寄せる明子と言葉を交わしたことで、久しぶりにリラックスした様子を見せます。
ところが、明子が辞去しようとしたまさにその時、「おおっ、べっぴんがそろってお出迎えか」と言いながら、なんの前触れもなく公三郎の父親がドアを開けて入ってきたのです。
そして、チヌとの結婚を認めていないらしく、挨拶に行った際決して彼女と顔を合わせようとしなかった公三郎の母親も、車椅子に乗ってやって来たのでした。
声なきものの唄 93話 感想・考察
93話の見どころは、公三郎の正式な妻となった元女郎の姿を一目見てやろうという野次馬根性で集まった人々に対し、チヌが勇気を出して立ち向かうシーンです。
望んで身を売ったわけではないのに卑しいと蔑まれ、心ない言葉を浴びせられながらも、自身の気持ちを真摯に伝えたチヌの健気さにジンとくると共に、あえて目立つ振る舞いをすることで自分たちの結婚を周知させただけでなく、そうすることで起きると予想されるトラブルへの対処も抜かりなく済ませてある公三郎の周到さから、チヌへの愛情が感じられてグッときます。
次回ネタバレはこちら
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