今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」90話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 90話 あらすじ
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突然チヌを突き飛ばし、海へ落とすという凶行に及んだサヨリは、そのままどこかへと姿を消してしまいました。
落ち込むチヌに対し、公三郎や東陽楼のおカアさんは、サヨリにとっての幸せはサヨリにしかわからず、妹によってお膳立てされた暮らしの中にはなかったのだろう・・・という旨を言い聞かせます。
その頃サヨリは、瀬島を見つけ出すために、1人で大阪へと向かっていました。
サヨリは「お香」として生きることを望んでおり、ゆえにチヌとの繋がりは不要だと切り捨てたのでした。
声なきものの唄 90話 ネタバレ
バッシャーンと派手な水しぶきを上げて海中へと落下したのは、やはりサヨリによって背中を押されバランスを崩したチヌでした。
泳ぎが得意なだけあって幸い溺れたりはせず、怪我を負うこともなかったものの、騒ぎに乗じてサヨリは姿を消してしまい、そこまでして自分のそばから逃げたかったのか・・・?とチヌは大層ショックを受けます。
心配して駆けつけた公三郎から、「価値観」・・・すなわち自分にとって「何が一番か」ということは人によって違うものであり、「サヨリさんの「一番」は、ここにはなかった ーー ということだろう。そしてそれは、チヌちゃんのせいでも、誰のせいでもないんだよ」と優しく慰めの言葉をかけられても、彼女は涙を流し続け、なかなか立ち直ることが出来ずにいました。
そんなチヌに対し、「ごくまれに「女郎が天職」っちゅう女もおる。世間様では「よし」とされる境遇でも、イヤっちゅう者もおるわ」と静かに現実を突き付けたのは、東陽楼のおカアさんでした。
東陽楼のおカアさんは、さらに「たぶん、あんたの思とる「幸せ」と姉さんの「幸せ」は違とるんやな。姉さんは己の幸せを見つけに行ったんやろう」と続け、チヌはそこでようやく、サヨリの意志や希望を尋ねようともしないまま強引にうさぎ屋から連れて来てしまったことに気が付きます。
そうしてチヌは、自分勝手な想いを姉に押し付けてしまった己を恥じつつ、縁があればいつかきっとまた会えると信じ、前を向くことを決めたのでした。
一方その頃、チヌを突き飛ばした後首尾よく別の船へと乗りこむことに成功していたサヨリは、岡山を経由して大阪を目指していました。
彼女の目的はただ1つ、瀬島を捜し出し彼と再び会うことです。
東陽楼のおカアさんがチヌに言って聞かせた通り、サヨリは「お香」としての自分こそが、持って生まれた己の本性であると考えていました。
しかも、彼女の体には梅毒と思しき症状が現れており、それに気付かれて病院へ強制入院させられてしまう・・・ひいては瀬島を捜しにいけなくなってしまうことを恐れた結果、サヨリは(チヌ。あんたはいらんのや、「お香」のうちには)という結論に達し、妹を海へ突き落とすという凶行に走ったのです。
ただサヨリは、再会するまでチヌが危惧していたように、自分たちが身を売る原因を作ったとして妹を恨んだり憎んだりはしていませんでした。
それでも、(「お香」になった己を悔やむ心は一片もねえ)と心の中で言い切るサヨリにとって、チヌの存在はすでに「いつか見た遠い風景」と同じ、うっすらとした思い出の中のものとなっていたのでした。
声なきものの唄 90話 感想・考察
90話の後半では、瀬島に捨てられ落ちぶれて以降ずっと明確に描かれることのなかったサヨリの胸の内がようやく明かされ、チヌと再会した際の形容しがたい表情の理由や、チヌを海へと突き落とした動機など、様々な謎が解けました。
ただ、無事に瀬島を見つけることが出来たとしても、かつてより価値の下がってしまったサヨリを彼が歓迎するとは思えません。その点はサヨリ自身もきちんと理解していることでしょう。
ではサヨリは、瀬島と再会して、一体彼をどうしようと考えているのでしょうか?
チヌと公三郎の行く末と同様、この2人の未来からもまだまだ目が離せません。
次回ネタバレはこちら
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