今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」88話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
↓↓↓
声なきものの唄 88話 あらすじ
前話ネタバレはこちら
↓↓↓
すると、まるで彼らを待っていたかのようにサヨリが姿を現しますが、チヌが「ただいま」と声をかけても、相変わらず無表情のまま口を開こうとしません。
ところが、公三郎に対しては打って変わってあからさまにしなを作り、自分はサヨリではなく「お香」だと名乗るのでした。
声なきものの唄 88話 ネタバレ
後藤田は(そうや!わしゃ「強盗後藤田」と呼ばれとる男やった。若様から女を奪って何が悪い!?)と内心で開き直り、「今までんように、二人で楽しもうや」などと言いながら、手近な宿へとチヌを連れ込もうとしていました。
しかし、チヌが無言のまま涙を流す姿を見て、かつて同じように力ずくで彼女を手に入れようとした岸のことが頭をよぎり、ハッと我に返ります。
さらに、そんな岸に向かって「千鳥の「好き」はあくまで女郎の「好き」や。お互い商売と納得しての遊びのハズや」と指摘したことも思い出し、同じ穴の狢となってしまった己をひどく恥ずかしく思ったのでした。
そこへ折良く公三郎がチヌを迎えにやって来たため、後藤田は「おい!若様!!早う連れてゆけそん女!もう二度とわしん前にカオ出さすな!」とあえて粗暴に言い放つと、2人に背を向けたまま早足でその場を去りました。
そんな後藤田の後ろ姿を見送った後もチヌはしばらく涙を流し続けていましたが、「おちつくまで休むといい。おいで」と言いながら手を差し伸べてきた公三郎に従い、そのまま一夜を共にします。
そうして翌日の昼近く、公三郎に付き添われて藤富の本宅へと戻ったチヌを出迎えたのは、現在芸事修業中の身である美緒でした。
さらに、何処からか音もなく現れたサヨリが美緒の背後に立ちますが、彼女がチヌへと向けるのは相変わらず冷めたような眼差しで、「姉やん、ただいま」と言われても返事をするどころか表情さえ変えません。
勘が鋭い美緒は、そんなサヨリに対し漠然とした恐怖を抱いていました。
東陽楼のおカアさんの計らいによって、うさぎ屋では気遣う余裕のなかった身なりを美しく整えてもらって以来、サヨリは笑顔を取り戻し、美緒たち修業中の見習いへ三味線を教えるほどとなっていましたが、何故かチヌに対してだけは言葉を交わすことすらしませんでした。
それを気に病むチヌのため、公三郎は「ふたりで故郷を訪れたらお姉さんの気持ちもほぐれるんではないかな?」と姉妹で伊之島へ行くよう提案し、旅行用の着物まで作ってくれます。
その着物を広げながら公三郎と旅程について話していると、東陽楼のおカアさんから「チヌ、ちいっとお夕食んことで・・・」と声をかけられたため、チヌは少しの間彼のそばを離れることになりました。
すると、またしてもサヨリが気配もなく現れて、公三郎の背後で「まあ、ほんまにええお着物」と呟いたのです。
かつて彼自身が「やはり姉妹だね。声が、よく似ている・・・・・・」と評した通り、サヨリの声はチヌのそれと似ていたため、公三郎は「チヌちゃん?」と言いながら声の主を振り返りました。
するとサヨリは「あら・・・いややわ。サヨリ・・・いえ、お香ですわ」と言いながら、寄り添うようにして公三郎の肩に手を置いたのでした。
声なきものの唄 88話 感想・考察
88話はなんと、再会してからというもの、モノローグはおろかセリフや表情の変化がほとんどなかったために何を考えているのか全く推し測ることの出来なかったサヨリが、チヌがそばにいない状況で公三郎へ近付き、彼に対して自らを「お香」と名乗る・・・という不穏な展開で幕を閉じました。
これはつまり、「チヌの姉」としてではなく、1人の「女」として公三郎に自分を認識してもらおうとしているということでしょう。
大切な妹を任せるに足る人物かどうか見極めるためにあえて・・・という可能性もありますが、どんな思惑があれ公三郎には毅然と対応して欲しいところです。
次回ネタバレはこちら
↓↓↓
コメント