今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」85話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 85話 あらすじ
前話ネタバレはこちら
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声なきものの唄 85話 ネタバレ
「僕はいったんふもとへ下りて、お姉さんを運ぶ手筈を整えてくるから、君はここで待たせてもらいなさい」
という公三郎の言葉に従い、うさぎ屋に残ったチヌは、セン姐たちに向かって平伏し、「姉やん・・・サヨリがえろうお世話になりまして、ほんまにおおきに」とお礼を伝えます。
その礼儀正しさにセン姐は「さすが二枚目やった女よな」と感心しますが、ツルとカメは「こん地味女がっっ」と驚き、姉妹の顔があまり似ていないことを指摘しました。
チヌが「うちら・・・うちゃ父親似で、姉やんは早うに亡うなった母親似で・・・」と説明し、「姉やんはうちの母親代わりやったとです」と続けると、セン姐は「・・・そいにしちゃあ、お香からいっぺんも身内ん話は聞いたことねえが」と呟きます。
それに対してチヌは、父親が嵐の晩に船を出し、その結果命を落としたのは自分が病気にかかったせいであり、姉妹揃って売られた元凶と言える自分をサヨリが恨んでいても不思議ではない・・・と苦界に身を落とした経緯を静かな声で語ったのでした。
それからほどなくして俥の手配などを終えた公三郎が戻り、チヌは改めてセン姐たちへ頭を下げてから、サヨリを連れてうさぎ屋を後にします。
やがて一行は皆月というふもとの町へ到着し、体が弱っており意識も混濁しているサヨリはしばらく入院することになりました。
ただ、医療費は非常に高額なもので、庶民は入院や治療費のために田畑を売ったり銀行などから借金をするのが普通であったため、チヌは不安げな顔で公三郎へ足りない分を貸して欲しい・・・と申し出ます。
すると公三郎は「チヌちゃん、君は僕の妻になる人だ。君のお姉さんは僕の義姉でもある。心配せずに、僕にまかせて」と言い、すべての費用を負担してくれたのです。
若様あああああああああああああああああ泣
チヌは、そんな公三郎の厚情に感謝しながらも、大地主で会社をいくつも持っている彼と女郎上がりの自分との違いを痛切に感じ、思わず涙をこぼしてしまいます。
実を言うとチヌは、自分ごときと公三郎が本当に結婚出来るとは心の底では思っていませんでした。
また、ようやく叶ったサヨリとの再会が夢見ていたものとは大きく違ったことも、チヌの心に影を落としていました。
眠るサヨリを見守りつつ、
とつい弱音を吐いてしまったチヌでしたが、たとえ公三郎と結婚出来ずとも、力を尽くして姉を見つけ出してくれた恩は、一生かけて彼に返そうと胸に誓ったのでした。
声なきものの唄 85話 感想・考察
85話の見どころは、丁寧なチヌの心情描写です。
悲願であった姉との再会を果たしたものの、想像だにしていなかったサヨリのやつれ切った姿への戸惑いに、公三郎とのこれからに対する迷いや恐れ・・・そして、それでも捨て去ることが出来ない彼への思慕など、千々に乱れるチヌの胸中が終始晴れることのない彼女の表情からひしひしと伝わってきて、読んでいるだけで切なくなってしまいます。
また、早みどりの時と同様、公三郎が権力と財力に任せて少々突っ走り気味で、チヌとの間に温度差があるように感じられるのが気になるポイントです。
次回ネタバレはこちら
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